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子どもたちに本物を見ることの素晴らしさを伝えたい! 宇根山天文台で感動体験を


この記事は、2020年7月取材時点での情報です


【幸せづくり】
宇根山天文協会
小林龍一郎(こばやし りゅういちろう)さん

標高699m、備後最高峰を誇る宇根山(久井町吉田)にある宇根山天文台。ここで長年天体の魅力を伝え、来館者から慕われているのが、小林龍一郎(こばやし りゅういちろう)さんです。人気の秘密は、元教師ならではの分かりやすい解説と親しみやすい人柄、そして宇宙への熱~い愛。小林さんに天文台を案内してもらいながら、宇宙との出合いや今後の夢を伺いました。

山陽自動車道三原久井ICから車で北へ約20分の場所に建つ


小林さんが宇根山天文台を案内!

小林さんの案内で、まずは1階にあるプラネタリウムへ。直径5mのスクリーンの下に約20席のイスが並びます。西日本で3番目に小さいプラネタリウムとのことですが、リピーターも多く、幅広い世代から人気があるそうです。その理由は、宇根山天文台のオリジナルプログラム!「決まった時間に決まったプログラムを上映するのではなく、お客さんに合わせて、臨機応変に内容を変えています。子どもには七夕やクリスマスなど季節に合った身近なもの、カップルには対になっている星の話といった感じにね」と小林さん。

親しみやすいテーマと、分かりやすく楽しい解説、大規模な施設にはないアットホームな雰囲気が魅力だ

続いて、2階の展望室へ。小林さんが「眺望の良さも大きな魅力!」と話すように、眼下には家族旅行村やゴルフ場、遠くには大崎上島、天気の良い日には四国山脈まで望むことができます。

夜には流れ星を見ることもできるそう
窓の外には美しいパノラマが広がる

そして、口径60cmの大型反射望遠鏡があるドーム内へと移動。取材時は昼間でしたが、小林さんに「のぞいてごらん」と言われ、望遠鏡をのぞくと白く光る星が!「これは、おとめ座のスピカ。260光年の距離があるので、今見えているのは江戸時代の光なんですよ」と教わり、思わず「へぇー」と声が出ました。「昼間でも見えるのは星との距離が近い証拠。それでも何百光年も離れています。宇宙がいかに広いかが分かるでしょう? じゃあ次はこっちの星を見て……」と小林さんの解説は続きます。そういえばそんなことを昔授業で習ったような、この星座にはそんな物語があったなんて!小林さんの話に聞き入り、取材に来たことを忘れてしまいそうです。まだまだ聞き足りないので、改めて宇根山天文台に遊びに来たいと思いました!

パソコンを操作すると、ドームがゆっくりと回り、屋根の中央部分が開く仕組みだ


宇宙や星を通じて、いろんな人とつながりたい

現在80歳の小林さん。60歳で定年退職するまでは、中学校教師を13年、小学校教師を10年、教育委員会に10余年と、教育一筋だったそうです。退職後、元同僚だった当時の会長から「遊んでいるのなら、手伝いに来い」と声を掛けてもらったことがきっかけで、宇根山天文台の運営に関わるようになりました。もともと天文学好きだったこともあり、これまでの経験を活かせる現在の活動は楽しいことばかりだと言います。

「特にうれしいのは、訪れた人が『すごい!』と感動してくれた時や、『また来たよ』と継続して来てくれた時。やっぱり人と関わるのが好きなんでしょうね。宇宙や星を通じて、いろんな人と出会い、つながっていきたい」と目を輝かせます。

「これがおもしろいんだけどねー」と宇宙や星に関する話を次々としてくれた

長年教師をされてきた経験から、一方的に話すのではなく「どのぐらいの大きさだと思う?」「スピードは新幹線より早い?」のようにクイズ形式で問いかけてくれるので、とても楽しく学ぶことができました。真面目でためになる話から、思わず笑ってしまうおもしろ話まで、小林さんの引き出しの多さと、人を惹きつけるトークにびっくり。普段は白衣を着られているそうで、その姿を想像してみると、思わず「小林先生」と呼んでしまいそうになりました。


大切なのは、実際に自分の目で見て、感じること

そもそも、小林さんが宇宙や星に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう?

「大学生の時、天文教育者として有名な村上忠敬さんの授業がとてもおもしろくて、興味を持ったのが最初かな。その後、教師として最初に赴任した中学校で科学部の顧問になりました。学校の屋上に望遠鏡が設置されていて、生徒と一緒に天体観測をしながら、カップラーメンを食べたのは良い思い出だなぁ」と懐かしそうに振り返ります。

天文教育者として有名な村上忠敬さんの授業が、宇宙や星への興味をもたらしたそう

そして40代後半に、自分の目でハレー彗星を見た時の興奮と感動は忘れられないのだそうです。「本物を見ることの素晴らしさを実感しました。今はインターネットで調べたら、すぐに答えが出てきますが、子どもたちには実際に自分の目で見て、感じて欲しい。地球が自転していること、土星に輪っかがあること、宇宙の大きさ……天文台ではいろんなことが体感できますよ」。

最後に、今後の夢を聞きました。「いっぱいありますが、この天文台から天文少年・少女がたくさん出たらうれしいですね。ここでいろいろな体験をして、天文学のおもしろさを知ってもらいたい。あとは、小学校や中学校への出張講座もしたいなぁ」と、子どもたちにどうしたら感動体験をしてもらえるか考える日々だそう。小林さんの夢はまだまだ膨らみ続けています。