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Vol9 沼田川土手の散歩道 緑のオーナー

赤い帽子に赤いポシェット。遠くからでも目を引くいでたちで17年間花壇のお世話をしている外川さんを尋ねました。

赤い帽子に赤いポシェットがトレードマークの外川さん

きっかけの花壇

沼田川土手の散歩道は梅に桜にひまわり、コスモスと、四季を通じて色んな景色が楽しめる場所です。海辺にうつる筆影山。野鳥。朝日。ここに来ると、日々の不安やストレスもちっぽけに思えてくるほど開放感があり、心がすっと安まります。
 
外川さんが、そんな沼田川土手で花壇の手入れを始めたのは平成18年。市報で募集していた「緑のオーナー制度」に手を挙げたことからでした。緑のオーナー制度は沼田川土手にスペースをもらい、花壇を作って手入れする制度で、当時はまだ働いていた為、忙しくはありましたが、退職後もこの花壇を自分の生きがいにしたいと思って応募したそうです。
以来、外川さんは花壇の手入れと地域のごみ拾いを習慣にしていて、今でも朝、友人とおしゃべりをしながらこの活動を続けています。

散歩道の人たち

花壇の手入れはトレードマークの赤い帽子と赤いポシェットを身に着けてしています。「いつもこの恰好をしているので、見かけた人は遠くからでも手を振って挨拶してくれますよ。嬉しかったのは近くの道を警察の方が通った時、『いつもお掃除ありがとうね~』とパトカーから声をかけてくれたことですね。」とニコニコ。
 
取材の日は、ひまわりの苗を育てている時期で、「毎年7月初めにはとても綺麗にひまわりが咲くんよ。」と教えてくれました。

「ここには水道がないので、夏場は水やりが大変だけど花が咲くと嬉しいからね。」なんと、5ℓのペットボトル4本に水を入れて3往復!一日に計120Lの水やりをしているそうです!
 花壇の手入れの途中で、欲しいという人に花の苗をあげたこともあり、あとから『花が咲きましたよ』と言ってもらい、とても嬉しかったとのこと。
 
手入れをしていると、顔なじみの人が声をかけてくれたり、時にはじっくり話を聞くことも。中には『二週間も人と話をしていなかった』という人や、子育て中のお母さんの悩みを聞いたこともあるそう。
「デート中の高校生を見かけたこともありますよ、老若男女問わず色んな人が訪れます。」

道草歌壇とは

『道草歌壇』と名付けて花とともに俳句も展示するようになったのは、一年前の令和4年から。たまたま花壇で知り合った方と俳句のやりとりをするようになった事がきっかけでした。
『雨上がり 苗木を植える ハナミズキ 元気に育てと 願いをこめる』
 
花壇にハナミズキを植えた時、外川さんは、よく咲くようにと俳句を一緒に添えて飾りました。すると、それを見て声をかけてくれた人が40年近く俳句教室をしていた先生で、話が盛り上がり、歌をお互いに作って花壇に飾るようになったそうです。

「先生との俳句のやりとりは三か月続き、その方の句集もいただきました。」
そんな経験から俳句の楽しみを知り、他にも俳句を詠む人はいないかと花壇に俳句ポストを設置。道草歌壇と名付けてみんなの俳句を展示することにしたそうです。

最初は自分の句の感想をくれる人が少しいるぐらいでしたが、話を聞いた友達が私もやって
みたい!と投函してくれるようになり、展示する俳句がひとつふたつと増えていくと、それに呼応するように投函される句の数も増えました。

展示は一週間で入れ替えます。2月は30件、3月は95件と応募が増えてきて、
多い時には月に150個の投稿が集まることも。現在調べているだけで22人が参加してくれています。
最初は俳句を募集していましたが、今では俳句だけではなく色んな作品が集まっています。
 

93歳の絵手紙作家さんは自宅にある絵手紙をたくさん持ってきてくれました。
短冊で短歌をいただいた方もいました。そのまま飾ると傷むので、外川さんが書き直して花壇に飾ったこともあります。
朝、散歩をしているご夫婦は、旦那さんが写真を撮りその時に話したことを奥さんがメモして写真の裏に貼って投稿してくれました。
ある人はいつも作品と一緒に手紙と差し入れをくれるんだけど、その字がとても達筆なのだそう。
 
「みんな、自分の作品を持っているんだろうね。けど、作品の発表の場がないだけなんじゃないかな?」
 
散歩道が程よく訪れる人の発表の場になっていて、道行く人もそれを見て楽しんでいるようです。外川さんの花壇スペースには花と作品がたくさんあり、そろそろ足りなくなってきたので、他の緑のオーナーにも声をかけて、展示場所を増やしました。
 
作品を展示していると、道行く人が、私はこれが好き、この作品が好きとぽつぽつと感想を言ってくれます。花壇のお世話をする時に自然と雑談をするようになり、輪が広がっていく。
「あの人はいつも草刈りをしてくれていて、あの人はほうきを持ってきて掃除をしてくれています。花壇の短歌を飾る場所が風で倒れそうになった時には、散歩コースのおなじみさんが補強の棒をつけてくれました。顔見知りで世間話もするけれど、名前は知らないっていう人もいますね。」
 
つかず、離れず、程よい距離感が居心地の良さを作っているのかもしれませんね。
 
「この散歩コースはとても不思議な場所なんよ。色んな人が来て、それぞれにこの場所を大事にしてくれる。花壇がここを歩く人のコミュニケーションの場になっていて、自分はそのナコード役やね。」と笑いました。

今後の夢

これだけ俳句や短歌を書いているけどちゃんと習ったことはないそうで、今年から市民大学で「短歌」と「書道」を習い始めたそう。
「せっかくならもっといい歌を書いてみたい。もっといい字で歌を飾りたい。」外川さんの夢はどんどん広がっています。

この記事を担当しているママライターの紹介はこちらから↓↓↓
https://note.com/miharacity/n/n77f4f0543c64/edit

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