世界中の高級レストランが契約を熱望! 三原から全国、海外まで、三原から誕生したスーパーファーマー
この記事は、2019年2月取材時点での情報です
【食づくり】
梶谷農園
梶谷譲(かじや ゆずる)さん
三原市久井町、そこに日本を代表する星付きレストランや海外からもシェフが訪れる「梶谷農園」のオーナーの梶谷さん。農業は大変、給料は安い、休みはない…そんなイメージを払拭したいと日々活動。
「いいものを作ったら喜んでもらえる、それって単純に嬉しいじゃないですか。だから、農業って素晴らしい職業だって、もっともっと広まればいいなと思っています」。
興味深いハーブの話はもちろん、梶谷さんの人間力に引き込まれていきます。
パリの有名シェフとの縁がはじまり。契約店が三つ星に選出され、爆発的ヒット
「地道にやっていくような性分じゃないから、まずは何かインパクトがあることをしよう」。
27歳の時に三原に戻り、農園を継いだ梶谷さん、なんと当時パリで最も予約困難だった三つ星レストラン『アストランス』へ。
世界中で注目されているシェフ、パスカル・バルボ氏に会いに行ったというのです。
「日本で農業しています、この野菜使ってもらえませんかって。そしたら僕の持って行った野菜で料理してくれて、一緒に写真も撮ってくれたんですよ」。
日本に帰った梶谷さんは、その写真を使って農園をアピールするポストカードを作りました。
“あのアストランスのシェフ、パスカル・バルボが「こんなおいしいハーブは初めて食べた!」と言っている”というコメントを添えて。
それを用いてレストランに営業。
フレンチ業界で神話的に崇められているシェフが、日本のしかも広島の農園を絶賛していると、とても驚かれたそうです。
しかも、パスカル氏自身にも、彼の元で修行した日本人シェフを紹介してもらったそう。
そして、その翌年の2007年、日本で初めて「ミシュランガイド東京」が出版。
パスカル氏のおかげで縁ができた4店舗、それら全てが三つ星店に!
「5店舗あった三つ星店のうち4店舗の共通点が、うちのハーブだった訳です。それからは文字通り、電話が鳴り止まない状態でした」。
世界のトップレストランで次なる食の流行をチェックし、料理人が求める野菜を作る
冬は1〜2月の間長期休暇を取り、最新のネタを探して海外へ飛び立ちます。
また、食べることが大好きで、グルメ界のアカデミー賞と称される国際的な食のアワード「世界のベストレストラン50」は発表されるとすぐさまチェック。
BEST3に選ばれた店舗には必ず足を運んでいます。
いま、シェフたちは、市場やスーパーに並んでいないものを求めているといいます。
例えば水菜だと、一般的に見かけるものよりもっと小さなサイズや、花や根が欲しいという要望が出るのだそう。
「ファッション業界で毎年トレンドカラーがあるように、食の業界にもトレンドがあります。次に流行る料理が何かを知れば、おのずと必要な食材も見えてくる。今年ぐらいからかな、次はロシア料理がくるんですよ。だから今は、ロシアのハーブを育てています。それをね、多くの農家が知らないだけなんです」。
仕入れるときに大切にしていることは?と聞くと「色や形がかわいいこと!」と即答。
梶谷さんの手のひらに、ちょこんと乗ったハーブの葉。お皿の上で、メーン食材に負けない存在感を放つ姿を想像して、思わず胸が高鳴りました。
久井町でもグローバルな仕事は可能。成功の鍵は英語力とコミュニケーション能力
農家が買い手を選べる時代になってきている、と梶谷さん。
「どこでもいい訳じゃない、やっぱり相性ってあるんです。だから僕が取引する際には、お店の経歴などの資料を出してもらい、直接シェフと会って話をします」。
そして現在契約待ちのレストランは、数百軒以上にのぼります。求めている人は多いのに絶対数が足りていない、だからどんどん他の人も参入してほしいと言います。
それでは、何が成功の鍵なのか。
そう尋ねると「英語が話せること」という返答が。
「英語が話せるだけで、世界の半分ぐらいの人とはコミュニケーションが取れますから。相手が求めているものを知るには、どれだけコミュニケーションを取れるかが大事なんです。みんな海外にもっと出て色んな経験をした方がいい。海外旅行なんていまや珍しくないし、国内旅行より安いところもいっぱいあります。三原は空港や新幹線の駅があるのですぐ海外にも出られるし、別に田舎にいたってグローバルな仕事はできますよ」。
その言葉を聞き、三原を拠点に全国、そして世界を股にかけての仕事も決して夢ではない。
梶谷さんの話を聞くことで今後の働き方や生き方への可能性と勇気をもらうことができました。