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馬と共に歩む ~アスリート、そして乗馬クラブオーナーとして~


この記事は、2020年10月取材時点での情報です


【幸せづくり】
苅谷乗馬クラブ
苅谷幸生(かりや ゆきお)さん

三原市に乗馬クラブがあることを知っていますか? 苅谷幸生(かりや ゆきお)さんは、大和町にある「苅谷乗馬クラブ」のオーナーで、馬術競技の現役の選手。1年365日、朝から晩まで馬、馬、馬……の毎日を送っています。馬との出合いから、選手としての活躍。そして乗馬クラブの設立やホースセラピーのこと、今後の目標までお聞きしました。

 

馬=仕事のパートナー

三原市北部の大和町にある「苅谷乗馬クラブ」

苅谷さんは乗馬クラブを営みながら、馬術競技のアスリートとして精力的に活動する苅谷さん。馬術競技とは、人と馬とが一体となって競技を行うスポーツで、オリンピックの公式種目にもなっています。苅谷さんは、馬術競技の中でも、コース上に設置された障害物を飛び越えながらミスなく早く走行する「障害馬術」の選手です。

2001年に開催されたアジア選手権で個人優勝、国体では何度も優勝・入賞している実力者だ

「父親が趣味で乗馬をしていたので、物心ついた時にはもう馬に乗っていました。最初に大会に出たのは小学3年生の時ですね。バーが越えられなくて、馬が止まってしまい、めちゃくちゃ悔しかったんです。あの悔しさは今でも忘れられないですね」と振り返ります。以降、毎年大会に出場し、障害馬術の奥深さにのめり込んでいった苅谷さん。当時は福山市に住んでいましたが、本格的に馬術の道へと進みたいと思い、高校進学を機に、有名な馬術クラブのある京都へ移ります。卒業後も京都の乗馬クラブに在籍し、国内外の試合に出るなど、修行に励む日々。

これまでの競技で入賞や優勝した実績が飾れている

ターニングポイントとなったのが、20歳の時に世界トップクラスと言われるドイツを訪れたことだそうです。「1カ月ほどの短い期間でしたが、選手としてもトレーナーとしても多くのことを学びました。ドイツと日本では、考え方や馬の飼育の仕方が全く違うのでカルチャーショックを受けました。特に驚いたのが、人と馬との向き合い方。ドイツでは、馬は仕事のパートナーだという考えなんです」。苅谷さんが、馬=仕事のパートナーと意識するようになったきっかけでした。

 

大和町と馬の不思議な縁

選手として実績を重ねていった苅谷さんは、2002年7月、40歳の時に「広島県の乗馬技術向上のために」と「苅谷乗馬クラブ」を設立します。各地を何カ所も見て回った結果、「馬にとって過ごしやすい気候」「広島県の中央に位置しアクセスが良い」などの条件から今の場所に決めましたが、偶然にも大和町は、馬と深い縁がありました。

三原市北部にはかつて日本でも有数の牛馬市がありました。大和町でも古くから田んぼを耕したり、木材を運んだりするのに馬が活躍しており、草競馬が行われていた歴史もあるといわれています。

「苅谷乗馬クラブ」の近くには「馬渡橋」という名前の橋も。この地に馬との関わりがあったことが感じられる
現在、預かっている馬も含め21頭を飼育

苅谷さんは毎朝5時過ぎに起き、1日4回のエサやり、厩舎の掃除、馬の健康チェック、トレーニングなどを行っています。生き物が相手なので365日休みはありません。

「1番大変なのは馬の健康管理。体調が悪い場合は馬の表情やしぐさを見て、できるだけ早く気付いてあげることが重要です。長年の経験が活きてきますね」。では、楽しいことは?「馬と息がぴったり合って、上手にトレーニングできた時かな。人間と一緒で、神経質・怖がりなどいろんな性格の馬がいます。それぞれの個性や向き・不向きに合わせて調教し、信頼関係を築くことが大切。馬にリスペクトしてもらわないとだめなんです」。

馬の健康管理を徹底し、しっかりと調教することは、馬が長く仕事を続けられることにつながります。そして、それは結果的に馬が長く生きられることになるのだそうです。

馬がけがをしたり、体調を崩したりすることなく、仕事を続けられるように、健康管理などを徹底している


馬とふれあう素晴らしさ、楽しさを知ってほしい

「苅谷乗馬クラブ」では、インストラクターが手綱を引く馬に乗る「引き馬」から、初心者向けの入門コース、馬術競技を行う人向けの本格コースまで、さまざまな乗馬体験ができます。

苅谷さんをはじめ、経験豊富なスタッフがマンツーマンで指導してくれるので、初心者でも安心して馬に乗ることができる

「多くの人に馬とふれあう素晴らしさ、楽しさを知ってもらいたい。馬の背に乗り揺られることで、心も体もリフレッシュできますよ!」。

苅谷さんは今話題のホースセラピーにもいち早く注目していました。ホースセラピーとは、馬とのふれあいや乗馬体験を通じて、精神機能と運動機能を向上させるリハビリテーションの方法の一つ。

馬に乗ることで体幹が鍛えられ、心身が癒やされると言われています。苅谷さんはドイツの専門家の講習を受けて「ドイツヒポセラピー」の認定証を取得。これまでセラピー指導をしてきた中で、言葉が出にくかった子の言葉が出たり、杖を持って歩いていた子が杖無しで歩けたりする姿を目にしてきたと言います。

選手として馬と出合い、今では選手と乗馬クラブのオーナーという2つの顔で馬と関わっている苅谷さん。「中学生や高校生など次世代の若者が、より馬とふれ合える機会を増やして、馬術競技の選手の育成をしていきたいですね」と意気込みます。大和町から次世代の馬術選手が生まれる日は、そう遠くはないかもしれません。


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