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元カープ選手が三原で鍼灸師に! 自身の経験を生かし患者さんに寄り添った施術を提供


この記事は、2021年9月取材時点での情報です


【幸せづくり】
すずき鍼灸接骨院
鈴木将光(すずき まさみつ)さん

2020年9月、三原市宮浦に『すずき鍼灸接骨院』がオープンしました。院長を務める鈴木将光さん妻の聡子さんの二人で営んでいます。鈴木さんが鍼灸師を志したきっかけや、新しい拠点として三原を選んだ理由、今後の夢などをお聞きしました。



高校生ドラフト1位でカープに入団! ケガに悩まされた現役時代

閑静な住宅街に立つ『すずき鍼灸接骨院』。院長の鈴木将光さんが「こんにちは!」と爽やかな笑顔で迎えてくれました。院内に入ってすぐ、エントランスには野球のユニフォームやバットが展示されています。

実は鈴木さん、元広島東洋カープの外野手。富山県出身で、小学1年の時に野球を始め、名門・石川県の遊学館高校時代には甲子園に二度出場。2005年、高校生ドラフト1位で広島東洋カープに入団しました。

「記憶に残っているのは、ケガが多かったこと。肩を痛めたり、腰を手術したり、毎年ケガとの戦いで、正直思うようなプロ生活は送れませんでした。高卒で入団し、プロの練習についていくのは、体力的にも精神的にも相当きつかったです。くさりかけたこともありましたが『もっと野球がうまくなりたい』『一軍の試合に出たい』と無我夢中でした」と現役時代を振り返ります。

印象に残っている試合は、やはり一軍での初ヒット。入団7年目、スタメンで一軍デビューを果たした日の初打席だったそう



嬉しい思い出もたくさんあったそうですが、野球人生を振り返ると、失敗した記憶の方が心に残っているとのこと。

「初めての一軍の試合でバントを失敗したこと、二軍の大事な場面でエラーをしたこと……。子ども達に野球を教える時には、成功体験よりも失敗談を話すようにしています。失敗したことを伝える方が役に立つんじゃないかと思うんです」。

ケガに悩まされた鈴木さんは、2015年に現役を引退、当時の心境は「悔いはあるがやり切った」という気持ちだったそうです。

玄関すぐに飾られた現役時代のユニフォームと仲の良い選手のバットなど。現役時代の思い出が蘇る




「裏方としてアスリートをサポートしたい」と鍼灸師の道へ

鈴木さんは引退後、「自分がケガで苦しんだからこそ、今度は裏方としてアスリートやスポーツをする子ども達をサポートしたい」との思いから、鍼灸師の道に進むことを決意。選手時代は自身もヘルニアで、はり施術を受けながらプレーをしていたそうです。

翌春、広島市の朝日医療専門学校に入学。朝から夕方まで治療院でアルバイトをしながら、夜は学校で学ぶというハードな生活を3年間送りました。机に向かって勉強するのは辛かったそうですが、「野球しかできない」と周りから言われるのが嫌だったため、持ち前の負けん気で乗り切りました。

実際の施術の様子。眼精疲労緩和のため、首回りにはり施術を行う

そして、国家資格の「はり師・きゅう師」の資格を取得すると、2020年9月に念願の「すずき鍼灸接骨院」をオープン。しかし、なぜ地元でもなく、広島市内でもなく、三原で開院されたのでしょうか?

「三原は妻のふるさとでもありますが、選手時代に、野球教室や餅つきイベントなどで、よく三原には来ていました。その時に知り合った人が、温かくて楽しい人ばかりで。この人達と一緒に三原を盛り上げていけたらと思ったのが移住したきっかけです」。

現在は同院での仕事のほか、競輪選手やプロゴルファーのトレーナー、広島市の少年野球クラブのコーチなど、多忙な毎日を送っている鈴木さん。三原の草野球チーム『ガナドール』にも、選手兼コーチとして所属しています。「まだ本格的には参加できていませんが、今後はここで野球をしていきたい」と意欲を燃やします。



夫婦二人でめざすのは、ゼロからプラスに持っていく施術

接骨院のロゴマーク、ひらがなの「す」と羽ばたく「鳥」を掛け合わせている



『すずき鍼灸接骨院』は、鈴木さんと妻の聡子さんの二人で営んでいます。鍼灸師の鈴木さんが、はりや灸を使った施術で腰痛や神経痛など慢性的な痛みにアプローチ。柔道整復師の資格を持つ聡子さんが、骨折や脱臼、捻挫など急性症状に対応しています。実は、聡子さんも元女子プロ野球選手。

「元プロアスリートの経験を生かして、ケガの痛みや不調、術後のリハビリなど患者さんの悩みに寄り添い、丁寧に施術しています」と二人。同院には、スポーツでケガをした人から、肩や腰の痛みで悩んでいる人まで、さまざまな症状の人が訪れます。

鈴木さん夫妻の気さくな人柄もあって、施術中は「昨日はカープ勝ったね」「あそこのラーメン屋がおいしいよ」など会話が弾み、和やかな雰囲気に。患者さんと話す時は上から目線にならないようにしつつも、言うべきことははっきり伝えるのが鈴木さんのモットーです。

「ケガを治してゼロに持っていくのではなく、ゼロからプラスに持っていく施術をしたい。ただ通うだけでは完治は難しいので、姿勢や体の動かし方など、日常生活の中でも患者さんの意識が変わるようなアドバイスをしています」。

はり、灸施術は鈴木さん。整体は妻の聡子さんが対応。夫婦二人三脚で院を営む




今後の夢を聞くと、「院内にトレーニングができるスペースを作りたいです。ゼロからプラスにするためには、スイングを確認したり、体を動かしたりする場所が必要ですから」と鈴木さん。そして、「三原の子ども達に野球の指導をしたいですね」と目を輝かせます。

選手時代、専門学生時代を経て、これから三原の地で新たな挑戦に向かっていく鈴木さんのまぶしい姿が忘れられない取材になりました。