Vol10 大和町下草井黒谷地区「まほろばくろたに」の茶
小雨がぱらつく中、ワークショップの参加者は、坂を登って茶畑へ向かいました。目的の茶畑は、木立に囲まれぽっかりと開いた山の斜面にありました。
「想像とちがうでしょ?」と、案内していただいた和氣さん。静岡県の広い茶畑のような場所を想像する人が多いので、皆さん、驚かれるそうです。茶摘みは、先端の「一芯二葉」のみを折り曲げると簡単に摘めます。決して爪をたてないようにしなくてはいけません。説明を聞いた後、黙々と茶摘みの作業を続けます。摘んだ茶葉は、翌日のワークショップで「手揉み」の作業をしました。窯で30秒蒸した茶葉は、手作りのホイロというガスコンロを仕込んだ台の上で、揉んで乾燥させていきます。茶切り、横まくりと作業が進むにつれて、会場はお茶の渋く、でも甘くて爽やかな香りに包まれていました。
京都で学んだ技術を生かした本格的なお茶へ
平成24年、大和町下草井にてボランティア団体「まほろばくろたに」が発足しました。地域のために、他の団体ではやっていないことをやっていこうと、文化の掘り起こしに注目したそうです。そこで、地域に自生していた、浅野藩に献上していたお茶「鷹の爪」を復活させることになりました。
京都府宇治まで玉露名人として知られる山下新貴さんに茶樹(ちゃじゅ:お茶の木のこと)の育て方から茶葉になるまでを学びに行き、茶葉を手もみする際に使う「ホイロ」を手作りしました。里山の環境整備により自生していた茶樹は徐々に広がり、上品な手もみ煎茶ができるようになりました。
茶摘みから仕上げまでの体験会
毎年開催している、茶葉を蒸して手揉みしながら仕上げていく作業の体験会。過疎化の進む地域ですが、地域内外の人たちとの交流の場となっています。平成31年度から広島大学の「地域元気応援プロジェクト」と連携していくことになり、伝統工芸を学ぶ学生も体験会に参加しています。広島大学文学部伊藤ゼミの学生と協力して学生がデザインした三原だるまの茶器と、県内の伝統工芸品と、茶葉のコラボ商品が出来上がりました。これらは、ふるさと納税の返礼品としても登録されています。
全てが手作り作業
茶摘みから蒸して手揉みで仕上げるまでの全てを手で行うので、手間のかかる作業になります。茶葉は生茶として12kgほど摘まれますが、完成品は2.4kgほどになり、さらに茶葉が採れる時期は限られるため、冷凍して土日に手揉み体験会を行えるようにしています。
今後も、広島大学の学生、体験会に参加してくれる人、賛助会員の協力のもと、活動を継続していきます。交流人口が増えることで、地域の活性化にもつながっています。
まほろばくろたにという名前の由来
「まほろばくろたに」という名前の由来を聞いたところ、「やまとまほろば」と同じく「大変美しく良いところ」という意味でつけられたそう。
日本武尊が「倭は 国の真秀ろば 畳なづく 青垣 山籠れる 倭し 麗し」(やまとは くにのまほろば たたなづく あをかき やまごもれる やまとし うるわし)と詠んだそうで、意味は「大和は国のなかでももっともよいところだ。重なりあった青い垣根の山、その中にこもっている大和は、美しい」とあります。
茶畑から見える黒谷地区を思い出すと、この名前をつけられたお気持ちが伝わってきました。
浅野藩献上茶「鷹の爪」
茶葉の先端のとんがりから「鷹の爪」という名前の由来となっているそうです。
「鷹の爪」復活事業は、旧浅野藩の現当主に注目され、令和元年に行われた浅野入部400年記念事業で進呈されました。
「鷹の爪」は、インターネットのほか、三原市内の道の駅でも購入できるそうです。手間をかけて仕上げられた上品な茶葉を、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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