歴史ある醤油蔵を受け継ぎ、伝統のおふくろの味を守り続ける
この記事は、2019年2月取材時点での情報です
【食づくり】
実広醤油株式会社
実広慶雄(じつひろ よしお)さん
良質な水に恵まれた三原は、古くから日本酒や醤油の生産地として知られてきました。
時代の移り変わりと共にそれらの蔵元は減少の一途を辿りましたが、実広醤油は歴史と伝統を現代に受け継ぎ、昔ながらの醤油を今も造り続けています。
現社長である実広慶雄さんは、今日も地元で愛される味を守り続けています。
今に引き継がれる昔ながらの手造り醤油
実広さんは1916年創業の100年以上続く歴史ある実広醤油の三代目。
「東広島の河内にある醤油組合で醸造した生揚醤油(きあげしょうゆ=もろみから搾りだして熱処理などをしていない状態の醤油)をこちらで調合し、火を入れてろ過し、それを瓶に詰めて出荷しますが、全て手作業で行っています」。
「昔ながらの醸造法で作るウチの醤油は、濃口、淡口、溜り、うまみの4種類があり、まろやかでほんのりとした甘みを感じる仕上がりになっています。また調合や貯蔵には代々受け継いだ巨大な杉樽を使っています」と実広さん。
仕事にも活かせる社長の趣味とは
「三原は名水も多いんです。海に面して港もあって交通の便もいい。
だから醤油造りが盛んだったんでしょうね」と、三原の醤油の歴史を語ってくれた実広さんの趣味は写真を撮ること。
カメラマンになりたいとは思わなかったのか?
と質問してみると、「いやあ、自分が蔵を継ぐんだろうなと、子どもの頃から漠然と思っていましたから。この歴史ある蔵を守らなければと、そんな風に自然と考えるようになっていたんでしょうね」と実広さんは、どこか恥ずかしそうに微笑みました。
実は、蔵のウェブサイトの写真は、全部実広さんが撮ったもの。またそのサイトでは、実広醤油の商品を使った自家製焼き肉のタレや自家製ゆずポン酢の作り方も紹介していますが、その製作工程を紹介する写真も、全てご自身で撮られているそうです。
そんな実広さんがおすすめする三原の撮影ポイントは、やはり佛通寺と三景園とのこと。
心の赴くままに風景を撮ることが好きなのだとか。
三原の醤油を広め、次代につなぐために――
実広さんは三原の醤油の良さを広めようと、自社ウェブサイトでネット販売も行っています。
「まだ数は少ないですが、リピーターもいるんです」。
また地元の食品会社からの依頼で、新たな商品「ぽん酢しょうゆ」も開発しました。
今では定番商品として、道の駅「みはら神明の里」などでも販売しているそうです。
「そうした依頼が舞い込むのも、長く続けてきたからこそでしょうね」。
近隣の歴史ある醤油蔵が閉業したこともあり、昔ながらの醤油を求め、遠くから足を運んでくれるお客さんもいます。
「あんたは若いけぇ、まだやめそうにないわ。安心した」といったお客さんの声に支えられているそう。
「地域の人たちからも、なくさないで欲しいと声をかけられます。そうした声に応えるためにも、続けていかないといけませんね」。
この町に唯一残った醤油蔵、実広さんはこれからも伝統の味を守っていきます。