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地域の資源を活用し、資源循環の養豚で食べ物と暮らしのエネルギーを考える


この記事は、2019年2月取材時点での情報です


【食づくり】
桜の山農場
坂本耕太郎(さかもと こうたろう)さん
 

高校の先輩の言葉で農業の道に進むことを決意、学校と各地の農家で“命を育み命を繋ぐ農業”とは何かを学んだ後『桜の山農場』をスタートします。

大事にしているのは、限りある資源を循環させ豊かな自給暮らしを確立すること。

父、坂本重夫さんの理想とした農業と同じ方向性で、循環型の養豚と有機農業に奮闘しています。



農業の道に進もうと決心させてくれた先輩の言葉


手書きの看板が訪れる人を迎えます

山間の道をあがっていくと、樹齢60年の大きな桜の木が迎えてくれます。ここは『桜の山農場』。

養豚を中心とした有機農業を営む坂本さんの農場です。

坂本さんの父は、その言葉が定着する以前から有機農業の道に邁進してきました。幼い頃、その仕事ぶりを見てきた坂本さんは有機農業に対してあまり良いイメージを持っていなかったと言います。

「手間がかかるわりに収入に結びつかない。もっと効率のいい仕事があるんじゃないかと」。思っていましたと話す坂本さん


高校は両親の勧めもあり三重県の愛農高校へ。

進学前、周囲とのギャップに悩んでいたという坂本さん。

「例えば派手にお金を使って自慢する友人を見て、自分で稼いだお金ではないのになと」。

こうした物質的な豊かさへの疑問、農業への疑問は、高校の先輩の言葉で解消されたそうです。

「食べ物を作るということは、人の命を支えること」。

強い信念を感じさせる言葉に”自分もこういう人間になりたい”―自らの意志で、この道に進もうと決心しました。



父の思いを理解し、自らもまた循環型の養豚を目指して

進学し農業というものを深く学ぶにつれ、父が目指していたものを心から理解するようになりました。

養豚の道に進んだのは、校内で開かれた意見発表会がきっかけ。

部門選択の際、希望者が少なかった養豚について調べ始め、バイオベッドという養豚方法を知りました。

籾殻等を使った発酵床(ベッド)の上で飼育することで汚水の発生や臭いを抑え、ふん出し掃除も不要でしかも暖かい、家畜にとってもストレスが少なく一石三鳥にも四鳥にもなる方法です。

「この方法で豚数が少なくても質の高い豚ができるのでは」。という坂本さんの意見は、高い評価を獲得


さらに坂本さんは、輸入飼料を多く使う量産型の畜産ではなく、豚数を減らして地域内で出る廃棄になってしまう食材いわゆる「食品ロス」など未利用資源を餌にし、地域循環型の農業を目指したいという考えがありました。

「豚ならそれができるんじゃないかと思ったんです」。と坂本さんは話します。

卒業後は、日本全国の卒業生が営んでいる農場などでひたすら研修を積み、故郷に戻ったのは25歳の時。

自分の理想とする農場をイメージすると、実家の山が自然と思い浮かんできたのだと言います。



改めて感じる故郷の温かさ。三原を一大有機農業地にしていきたい

「平和について考えるとエネルギーにたどり着く」と坂本さんは話します


世界で起こるさまざまな争いごとを紐解いていくと、有限な資源とそれらを活用したライフライン上で起こっているのです。

食べ物と暮らしのエネルギーを自給するスタイルこそが“自分たちにできる平和活動”と確信し、資源循環の養豚もまた、その考えを可能にすると考えます。

店頭に出せない作物や売れ残り商品など地域内における未利用資源を豚の飼料にしたいと地域の人に話したところ、賛同する人が新たな人を呼び協力の輪が広がりました。

「本当にありがたいです。祖父、父と代々この地域でお世話になっていますが、見守ってくださることの温かさを感じます」。

将来的には同じ有機農業を営む仲間と手を取り合い、三原を一大有機農業の地にしたいと話します。

「豊かな自然と交通の利便性。外から戻って改めて見ると、ここは恵まれているなとつくづく感じます」。

自身のライフスタイルや思いを知ってもらえればと、親子を対象にした味噌や醤油造りのワークショップなど、食と農に関わる情報発信も積極的に行っている坂本さん。

桜の山農場で販売している豚肉のセット

その心の中には、目指す地域農業のビジョンがしっかりと思い描かれています。