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ふるさとの自然を継承できる昔ながらの農法で、小泉町のサトイモ作りを繋いでいく


この記事は、2019年2月取材時点での情報です


【食づくり】
瀬戸ふるさと農園
岡田和樹(おかだ かずき)さん 

自然豊かな瀬戸内の景色が大好きと言う岡田さん。

竹原の忠海高校を卒業した年に、ハチの干潟が埋め立てられる計画を耳にし調査隊を立ち上げることに。活動を通じて改めて自然の大切さを感じ地域の中で循環しながら暮らしてきた百姓という生き方に興味を持ち農家として独立し、伝統野菜である小泉町のサトイモ作りに励みながら自然と共存する農業を模索しています。


ハチの干潟との出合いが循環する農業を目指すきっかけに

岡田さんが育ったのは「潮香る幸崎」が愛称の幸崎町


瀬戸内海沿岸幸崎町、で育った岡田さん。町を含む、自然豊かな瀬戸内の景色を愛してやまないと話します。

忠海高校を卒業してすぐ、同校がある竹原の河口干潟『ハチの干潟』が埋め立てられる計画を耳にし『ハチの干潟調査隊』を立ち上げ干潟の調査を開始しました。

ハチの干潟は絶滅危惧種を含む約500種類の生き物が棲む自然の宝庫。なんとか手つかずのまま残したいと、岡田さんをはじめとし地域の人々の熱心な活動もあって、2007年に埋め立て計画は取り下げになりました。

今でも定期的に観察会を行い、その生態系を守り続けている


また、その活動を通して知ったのが海草の一種であるアマモの存在。

水の浄化作用を促し生き物のすみかにもなるアマモは、化学肥料が普及する以前、瀬戸内海沿岸では有機肥料として利用されていました。

山から流れ海にたどり着いた養分をアマモが吸収、養分を蓄えたアマモを肥料として山や里に戻すという、初めて知るアマモの利用方法に、自然と人間の共存を見た岡田さん。

そのことが、循環する農法に興味を持つきっかけになりました。



在来野菜に心惹かれ、小泉町で特産のサトイモ作りにまい進

三原市の新規就農者育成事業に参加し、米やハウス栽培などさまざまな農家で1年間研修を積みました。

中でも岡田さんが心惹かれたのが、在来野菜と呼ばれるその土地で古くから栽培されている伝統的な野菜です。

「地域で親から子へ代々受け継がれてきた野菜があるのに、生産者がいないために消えていくのはもったいないと思って」。

研修を終えたのち就農先として選んだのは小泉町。

小泉町で昔から作られてきたサトイモ

手作業でサトイモを掘りおこし、天日に干した後、根ひげや羽毛を取る里芋拭きという作業を行い出荷をします。

収穫のピーク時期には毎日深夜2時3時まで作業が続くことも多いそう


他にはない作り方と苦労の上にできている小泉町のサトイモですが町では高齢化が進み生産量も減ってしまいました。

「誰かが受け継がないとなくなってしまう」、岡田さんはこの町でサトイモをつくることに決めました。

山に囲まれた小泉町は清涼な水が流れ、里地の自然環境が残されています


肥料は地域の有機物で手作りしたものを使用。アマモにカキ殻や落ち葉を堆肥化したものを混ぜ合わせています。

小泉町の砂地質の土壌で育つサトイモはひとつひとつ手で根ひげや羽毛を取り、磨くので見た目がきれいで日持ちするそう。

調理するとねっとり、ホクホクとした食感を楽しめる


「『小泉のサトイモはおいしい、これじゃないとだめ。』『初物は小泉産に決めている。』と言ってくださる方も多いんです」。



ふるさとの景色と受け継がれてきた作物をつなげていきたい

かつては40軒ほどあった小泉町のサトイモ農家も、今では6軒ほどしかないそう。岡田さんは、現在小泉さといも生産組合の組合長を務め、若い担い手を増やしたいと、小学校での食育活動や若手の農家の仲間と連携して収穫祭を行うなど情報発信に努めています。

また、安全で食味豊かな岡田さんのサトイモは学校給食に取り入れられたり、全国的に有名なシェフのディナーイベントで扱われたりと、注目を集めてきました。

昔ながらの自然と共存できる農法を志す岡田さんの田畑の周りでは、近年姿を消しかけていた生き物たちを見ることができるようになったと言う


「夏はホタルが飛んだり、ゲンゴロウやオオムラサキ、ギフチョウもすんでいます。循環できる農法で、川や海をできるだけ汚さないようにしたいと思っているんです。そしてきれいな自然環境が安心で美味しい作物を育ててくれます。すべては繋がっているんです」。

古くから受け継がれている作物と瀬戸内の景色を守るため、岡田さんは今日もサトイモ作りに汗を流しています


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