長年愛されるご当地飲料を製造。伝統を受け継ぎながら、時代に合わせた商品作りを
この記事は、2019年2月取材時点での情報です
【食づくり】
桜南食品株式会社
安井健(やすい たけし)さん
三原市で愛されているご当地ドリンクといえば「スマックゴールド」。地元では、飲んだことがない人はほとんどいないといっても過言ではありません。
昭和40年後半に開発され、全国の中小飲料メーカーで製造・販売されました。現在、製造を続けているのは、全国でわずか3社。
そのうち1社が、三原市西野にある「桜南食品」です。
3代目の安井健さんは、祖父の代から受け継がれてきた味を守りながら、時代のニーズに合わせた商品開発をしています。
三原のソウルドリンク。昔ながらの味はそのままに、、、
安井さんは、岡山の大手食品会社に勤めた経験の中で、食品や飲料を製造し続ける大変さや難しさを肌で実感したそう。
小さい会社ながらも、祖父と父が築き上げてきたものの大きさに気づかされたといいます。
「長く愛される商品を生み出すことは容易ではありません。だからこそ、昔ならがのテイストで提供していきたいと考えています」。
その言葉通り、変わらぬ味を守り続けているのが「スマックゴールド」。
商品誕生のきっかけとなったのは、昭和40年代の喫茶店のクリームソーダブーム。
その味を家庭でも楽しめるようにしてはどうか、というアイデアから生まれたのがスマックゴールドです。
桜南食品が作るスマックゴールドは、練乳をたっぷり使うことでミルク感を強め、濃厚な味に仕上げられています。
ちなみに、三原市内の飲食店でのみ目にすることができる、絵柄が施された昔ながらの瓶は、数千本しか現存していない貴重なもの。
回収して再利用しながら、大切に使い続けています。
「子どもも飲めるように炭酸は控えめですが、私と同じぐらいの世代の方からは、逆にもっと炭酸を効かせてほしいという意見も。
炭酸が強めの大人のスマックゴールドを作るのもいいかもしれませんね」。
今までにない大人味のスマックゴールド、形になるのはまだ先になりそうですがぜひ味わってみたいものです。
昭和感漂うデザインで関東でも話題に。レモン果汁でさっぱり若者も親しみやすく
「スマックゴールド」と並び、地元の人に長く親しまれているのが「ひやしあめ」。
湯で溶いた麦芽あめに、生姜の搾り汁を加え、優しい甘みと生姜の爽やかさが感じられる飲料です。
約4年前、人気漫画「3月のライオン」(羽海野チカ・白泉社)に登場したことで注目を浴び、それまで「ひやしあめ」の認知度が低かった関東でも話題を集めました。
レトロなグラスが可愛いくて使えると、絵柄が変わるごとに集めるファンもいるほど。
また、「若い人も馴染みやすいように」と新たな味を考案。約6年前からは、瀬戸内レモンのストレート果汁を配合することでさっぱり飲みやすく仕上げた、「瀬戸内レモン果汁入りひやしあめ」の販売をスタートしました。
さらに2018年には「ひやしあめ」を使用した、ご当地かき氷の「三原ひやしあめ氷」も道の駅で販売され好評だったそう。
最近では、地域に密着した原料を使用した商品開発にも取り組んでいる安井さん。
「昔ながらの味は大切に、地元の人に喜んでもらえる安心・安全の商品づくりを続けていきたいですね」。
一度県外に出ることで見えた、三原ならではの便利さと自然の豊かさ
10代から20代にかけて、海外留学や県外での就職を経験した安井さん。
一度離れたからこそ、地元の良さをより実感したといいます。
「自然を身近に感じながらゆったり生活できつつ、こんなにも利便性が高い地域はなかなかありません。たまに、三原には何もないなんて言葉を耳にしますが、むしろこんなに何でもあるところはほかにないんじゃないかと思っています」とにっこり。
「三原は気候が穏やかで、海の側に位置しながら、すぐそこには山もあります。それに加え、在来線や新幹線、三原港、広島空港と30分圏内にさまざまな公共交通機関がそろってます。飛行機に乗ればすぐに海外に行けますし、東京なら新幹線で4時間ほどで行けますしね」。
また、三原港から、しまなみエリアの島々への航路が充実しているのも魅力なんだそう。
便利さも、心の豊かさも、三原はその両方を手にできるまちなのだと、改めて気づかせてくれました。
安井さんは自然豊かなこのまちで変わらぬ味を守り続けます。