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三原の日本一、訓練犬とともに挑戦し続ける


この記事は、2020年2月時点での情報です


【幸せづくり】
第八防長警察・家庭犬訓練所 公認一等訓練士長
山縣 忠義(やまがた ただよし)さん
 

「まて!」「ふせ!」「よしよ~し」、芝生広場に山縣忠義(やまがた ただよし)さんの優しい声が響きます。山縣さんは、警察犬の訓練士。この道60年以上のベテランで、83歳の今も現役バリバリです。2019年秋に長野県で行われた「日本訓練チャンピオン決定競技会」では、指導したシェパード犬が足跡追及部門で日本一に。これで山縣さんの優勝は10回となり、大会の最多記録を自ら更新しました。



この道一筋64年、明けても暮れても犬、犬、犬!

山縣さんは、山口県下松市の出身。19歳の時、お兄さんの同級生が入所していて、その紹介をきっかけに宇部市の警察犬訓練所に入所。仕事を始めると、想像以上に訓練は厳しく、当時は犬の病気など衛生面の心配もあり、楽しいことばかりではなかったと振り返ります。

幼い頃から犬が大好きで、戦時中には軍務で成果を挙げていた軍用犬に興味を持っていたそう

「 明けても暮れても犬、犬、犬…の毎日だったけど、辞めたいと思ったことは一度も無い。やっぱり犬が好きなんよね。警察犬の訓練士として、この道一筋、浮気なし(笑)。」と山縣さん。

常時10頭ほどの犬を預かり訓練を行っている


その後、22歳の時に転勤で三原市へ。現在は、高坂町にある自宅の一角に警察犬訓練所を構え、一定期間預かる形で、犬の訓練を請け負っています。1歳に満たない子犬を一から教えることもあれば、県警で活躍中の警察犬を大会前に預かり指導することも。



大事なのは、根気よく教えること&しっかりと褒めること

「日本訓練チャンピオン決定競技会」は、1950年から開催されている歴史ある競技会。1年に一度行われ、日本全国から800頭近くの訓練犬が出場します。警戒競技、臭気選別、足跡追及の3部門があり、2019年、山縣さんは徳島県警の嘱託警察犬・カリーナと、地面に残された臭いをたどり、遺留品を見つける足跡追及部門で優勝しました。

チャンピオンに送られる記念のメダル。山縣さんの家には表彰状など、これまでの実績が並ぶ


ファイナルでの得点は、なんと100点満点中、99.1点! 大きなミスもなく、ほぼ減点がないという結果で、勝ち抜きました。

指導のコツについて山縣さんは「最初から上手くはいかないよね。何度も何度も繰り返し、根気よく教えることが大事。うちに来た頃は、『まて』『ふせ』を覚えるまでやり続けたかな。そして、できたらしっかりと褒めて、喜びを与えてあげること」と話します。「十人十色という言葉があるが、犬も一緒。明るい子もいればおとなしい子もいるので、犬ごとの性格に合わせて丁寧に訓練していく。犬と視線を合わせることも大切じゃね」と話します。

訓練中は犬の目を真っすぐ見て指導する


前人未踏の日本一10回を達成し、しかも10回とも違う犬で挑戦しているのが山縣さんのすごいところ。その功績から後輩からは「追及の神」と慕われていますが、「他の人より技術がないという気持ちで、地道に努力することが大切」と本人は至って謙虚です。

※嘱託警察犬・・・警察ではなく一般の人が飼育管理し訓練を行い、警察からの要請で出動する警察犬




節目となる2020年の競技会で再び日本一へ

全国各地の競技会に参加するため、年間5~6回は遠征する山縣さん。預かっている犬の世話もあり、休みはほとんどありません。「犬たちとの訓練も楽しいし、訓練したことが競技会で成果につながるのがうれしい。年齢関係なく、この年になっても日本一を取れる競技なんて他にはないでしょ」と80歳を超えても精力的に活動し続けています。


競技会前には毎日2万歩ほど歩くというのも、いつまでも元気でパワフルな理由の一つ。今の目標は、自身の参加60回目となる2020年の「日本訓練チャンピオン決定競技会」で、再び日本一になることです。「体力が続く限り、この仕事を続けたい」とまだまだ現役続行宣言です!